税務調査の目的と事前調査

税務調査の最大の目的はその会社や個人事業主の適正な税金を検査することです。ですから税務調査では税金を計算するのに必要なものを必要なだけ調査します。必要以上のものを調べることは決してありません。また、税務調査はほとんどが任意、つまり調べられる側が調査に同意をして初めて行われます。同意を得ずに調べる強制捜査もありますが、強制捜査をするケースは極めて悪質な所得隠しなどが疑われる場合などに限ります。税務調査で調べられる税金とは主に所得税と消費税です。この2つの税金が適正な金額支払われているのかを調査しています。税務調査の結果によっては所得税と消費税だけではなく住民税や事業税、国民健康保険などの金額が変化します。

 

税務調査に入る会社や個人事業主に対しては実際に税務調査を行う前に事前調査が実行されます。まず各市町村に死亡届を提出すると、その情報は税務署に提出されます。ですから税務署はその会社で誰が亡くなったかに関しては事前に全て把握しています。それと同時に固定資産税の情報も税務署に送付されます。相続する財産はほとんどが不動産ですから、これらの情報を照合することによって遺産を相続したときの相続税がおよそいくらになるのか計算することができます。したがって相続の際に相続税が適切に支払われていなかったりした場合、税務署側はすぐに気づきます。

 

金融資産の情報も事前に知ることができますが、無条件に情報を提供されることはなく、税務署側から情報の提供を申請しなければ知られることはありません。ただし杞憂資産に関して怪しいと税務署が判断すればすぐさま金融機関に情報の開示を指示し、情報を知りえることができます。金融機関に対しての金融情報開示の指示は税務署の職権によって行われるので金融機関側は断ることができません。照会することによってお金の残高や過去10年間のお金の動きを把握することができます。そして当然ながら会社や個人経営者の法人税の申告書もチェックされます。

 

これらの知りえる事前情報を把握したうえで税務調査の際には対象者に質疑応答をします。事前に調べていた内容と対象者の答えが異なっていれば疑わしいと感じて本格的な調査を行います。ですから税務調査に関しては虚偽の発言が通用しないと思っておいたほうが良いでしょう。

税務調査にかかる時間とどこまで調査されるのか

税務調査に要する時間についてですが、税務調査はほぼ丸一日調査されると考えた方が良いでしょう。だいたい朝10時ごろから調査が始まって午後5時くらいに調査が終わるといったスケジュールで行われるのがほとんどです。午前中は質疑応答がメインとなっていて、午後からは実際に資料を見て正しく税金が支払われているかチェックします。資料の他には調査対象者の持ち物や、変わったところではカレンダーなどを見ています。なぜカレンダーを確認するのかというと、カレンダーの送り先が相続財産に入っていない金融機関や不動産会社のものでないかのチェックをするためです。それらをチェックする事で申告漏れや隠し財産が発覚することもあります。

 

税務調査でどこまで調べるかに関してですが、税務調査では正しく申告をしてくれているかどうかを入念にチェックします。例えばギャンブルで数百万円負けたとしても、会社の経費でギャンブルをしていれば大問題ですが自分自身のお金を使って損をしたのであれば何も言われませんし、高級車に乗っていようが高層マンションに住んでいようが自分で稼いだお金を使用しての事なので何も追及されることはありません。ただし税金に関することについては入念にチェックされます。例えばその月の売り上げについて500万円と申告した場合、本当に500万円なのかはチェックされます。

 

正しい税金を計算するためには正しい利益を知る必要があります。正しい利益を計算するためには売り上げと経費が合っていることがとても重要です。ですから売り上げと経費に関してはとても細かくチェックされます。ただし会社の売り上げや経費に関係しない生活費に関しては調査されることはありません。

税務調査は何年分行われるか

税務調査はおおよそ5年分の売り上げや経費をチェックする事はほとんどです。税務署から税務調査の連絡がある場合は3年分の売り上げや経費について調べると言われることが多いです。まずは3年分の売り上げや経費について調べ、何らかの不備な点があった場合はそこから更にさかのぼって5年分の売り上げと経費をチェックします。5年分の売り上げと経費をチェックして脱税の疑いがある場合はさらに調べる期間が延長され、7年間になります。

 

税務調査の最大期間は上記のように7年間ですが、場合によっては9年前の収入まで調べられることがあります。これは消費税が関係しているためです。消費税は2年前の売り上げが1,000万円を超えると課税事業者となり、消費税を支払う義務が発生します。7年前に消費税を支払う義務があるかどうかに関してはそれより更に2年前の売り上げを調べる必要があるので9年前の収入を調べる必要があるというわけです。

まずは事業所得からチェックされる

税務調査で資料を調べる際に真っ先に行われるのが事業所得の確認です。税務調査で特に念入りに行われるのがその会社の売り上げの調査です。

 

税務調査をするにあたって売り上げを調べないということはまずありえません。通帳、請求書、領収書などさまざまな資料を確認し、金額があっているかをチェックします。場合によっては取引をした相手先に確認の連絡をすることもあります。特に現金での取引に関しては厳重に調べられることが多いです。

 

近年では請求書などの種類をパソコンで作成し、データー保存している会社も多いのでパソコンを調べられるケースもあります。パソコンを確認する際は調査員が勝手に操作することはありません。パソコンのチェックをしてよいかどうか対象者に確認を取り、調査員立ち合いのもと、そのパソコンを普段使っている人が操作をしてチェックする事となります。

経費が調査されることも

売り上げだけではなく経費も調査されることがあります。しかしながら経費に関しては先ほどの売り上げのように必ず調査されるということはなく、申告している内容によほど違和感を感じたり明らかに常識の範囲を超えている経費でない限りは細かく調べられることはありません。そして経費に関してのチェックは売上ほど資料を1つ1つ確認するようなことはあまりありません。領収書がきちんと保管されてあるかの確認に留まることが多いです。

 

ただし、経費に関しても例えば水増し経費が疑わしい場合は細かくチェックされます。疑わしいものに関しては相手先にも確認を入れ、本当に経費なのかどうかや、本当に記載されているものを購入したのかどうかなどを確認します。例えば飲食店のレシートで怪しいと感じたものに関しては実際にそのお店に行き、対象者が記載されている商品を飲食したのか確認をとることもあります。

通帳や生活費を確認されることも

場合によっては税務調査で銀行通帳を確認されることもあります。単純に銀行通帳の残高が大きく増えていればそれなりに収入を得ているだろうと判断できるからです。

 

例えば確定申告では500万円しか利益をあげていないのに、銀行の通帳を確認すると1,000万円も残高がふえていたらあきらかにおかしいと分かります。また、同じような理由で生活費も調査されることがあります。生活費が月に20万円かかるのであれば最低でも年間240万円は利益を上げなければ生活できません。それなのに150万円しか利益がないと記載されているとおかしい、ということになり詳しく調査されます。もちろんこれらの事例は借り入れをしているなど正当な理由があれば何の問題もありません。