税務調査の流れとは

納税者の税務申告に間違いがないかチェックすることを目的に、定められた流れにしたがって実施される調査を税務調査といいます。

 

帳簿などの内容をもとに申告額の妥当性が検討され、問題があれば修正申告を行ったり、追徴課税を支払ったりしなければいけません。

 

今回は調査がどのような流れで進行していくのかを解説させていただきますので、気になる方は以下の内容をご覧ください。


調査予告

税務調査の一般的なイメージは、国税局の査察部の人間がある日急に押しかけてきて、有無をいわさず行われるというものではないでしょうか。

 

調査の結果、多額で悪質な脱税がバレると大々的にメディアで報じられるため、そのようなイメージを持つ方が多いのでしょう。

 

このような税務調査は強制調査といいますが、報道によるインパクトは大きいものの、税務調査全体としてはそんなに行われていません。大部分は強制ではなく任意調査で、税務署や国税局の調査部、資料調査課によって実施されています。

 

なお、任意調査といっても複数の種類があり、一番よく実施されているのは一般調査という名称の税務調査です。一般調査はいきなり税務署の人間がやってくることはなく、事前通知が行われます。

 

普通であれば、2〜3週間前に電話で知らされることになり、税理士など税務代理人がいれば税理士に、いなければ会社に通知があるでしょう。

 

なお税務代理権限証書に会社側と事前同意がなされている旨が書かれていない場合、会社と税務代理人の両方に連絡がくる仕組みです。

 

そのほか調査が行われる日時はどうしても都合が悪いということであれば相談し、正当な理由として認められれば延期などに応じてくれます。調査は必ずしも本社で実施されるわけではなく、支社や工場などを対象として行われるケースも珍しくありません。

証拠資料の整理

税務調査を行うと連絡がきたときには、いつからいつまでの分を調べたいのかも知らされます。とくに悪質な不正行為があると疑いをかけられていなければ、3年分さかのぼって調べられるのが普通です。

 

通知された調査対象期間の証拠資料を、当日までに用意しておかなければいけません。

 

そろえておかなければいけないものとしては、領収書や請求書など税金に関係してくるものであれば何でもあてはまると思っておいて良いです。

 

仮に証拠となる資料が残っていない取引が存在する場合、調査では間違いなく問題視されるため、対処法を考えておかなければいけません。

準備する証拠資料の詳細

調査当日までに領収書や請求書など取引の証拠書類を集めなければいけないと述べました。ただ、もう少し具体的な情報が欲しいと思っている方もいるでしょう。

 

多くの場合、受領発行した領収書や請求書以外に、下記の資料が要求されます。

 

  • 発注書・受注書
  • 見積書・納品書
  • 契約書
  • 覚書
  • 手形・小切手の控え
  • 預金通帳
  • 勤怠管理表・タイムカード
  • 株主総会や取締役会などの議事録
  • 稟議書
  • 旅費交通費・退職金などの規定
  • 組織図・グループ会社関係図
  • 税金の納付書控え・社会保険料などの通知書
  • 総勘定元帳・補助元帳
  • 賃金台帳・年末調整書類
  • 現金預金出納帳
  • 棚卸明細表

 

重要と判断されればこれら以外の書類が求められることがありますし、必要と認められれば書類以外にも調査はおよびます。

 

たとえば、PCのデスクトップ、社長や経理の机の引き出し、社長の個人通帳などで、不審な点がないかチェックされるのです。

 

越権行為ではと思う方もいるでしょうが、必要な調査であれば税務署には質問検査権などがあるため、開示を拒否するのは困難でしょう。

実施当日

通知の際に互いに調整し、決定した日時に税務署員がやってきます。

 

任意調査で一般調査、中小の会社であれば、調査に要する日数は通常2日間です。

 

午前中から夕方まで調査官がいるのが普通で、ストレスを感じるかもしれません。

 

調査される側は求められた資料を渡したり、調査官による質問に答えたりするだけです。実施当日に必要書類の不備があれば、日を改めて提出するようにいわれます。

 

なお、公務でやってきているわけですので、調査官の食事などの気遣いは無用で、ご機嫌取りをしたところで結果に影響しません。

調査後の展開

調査官の指摘事項の有無によって、税務調査後の流れは変わってきます。

 

指摘事項があるというのは調査の結果、申告内容に問題があったということです。

 

税務署側の指摘に納得がいく場合には、修正申告書を作成し提出、追徴課税を納める流れになります。これに対し、指摘に納得がいかない場合には、修正申告はせずに納得いかないと調査官に申し述べ、税務署長の更正処分を待つことになります。

 

更正の内容も受け入れることができない場合には、国税不服審判所の審査後、裁判で決着をつける流れです。

 

一方、指摘事項なしの場合は更正決定等をすべきと認められない旨の通知書面が渡されて、税務調査は完了となります。

税務申告に間違いがあった場合の困り事

この場合すでに述べたように修正申告書の作成と提出、さらには追徴課税の支払いが待っています。

 

修正申告すること自体、次年の法人税を申告するにあたり、前年度の修正申告書を加味して内容をまとめる必要があるため計算が煩雑です。また税務申告の間違いが複数年にわたってあると、追徴課税の金額はふくれあがります。

 

税務調査は法人税や消費税のように国税絡みのものですが、それとともに地方税の直しも必要になるのです。

 

結果、延滞税や過少申告加算税のほか、重加算税が取られるケースもあり、さまざまな名目で総額での税負担が大きくなってしまいます。

追徴課税の支払方法

税務申告に誤りがあり、修正申告をして追徴課税を納めることになった場合、基本的には一括で全額納税しなければいけません。ただ金額によっては、とても支払うことができないという事態に直面してしまうでしょう。

 

その場合には、税務署との相談によって、分割での支払いにすることが可能です。

 

実際に分割納付ができるとなるとひとまず安心ですが、滞納をすると金融機関に融資を拒否されるようになるケースが少なくありません。

 

税務署側との分割納付の相談結果を示す協議文を金融機関に提出して、滞納ありでも借入できたケースもあるようですが、100%ではないです。

 

日本で最も多く行われている税務調査の一般調査では、事前通知を経て調べが入る流れになります。

 

不利な展開になるのを回避したければ、とくに税務代理人がいない状態であれば税務調査に強い専門家の力を借りたほうが良いでしょう。

 

プロと一緒に十分に準備をし、堂々と当日には情報を開示できるようにしたいところです。