税務調査は、企業の財務担当者にとって決して喜ばしいものではありません。しかし、税務調査には、横領や着服などの不正を見抜くという効果もあり、適切な会計処理を促してくれるというメリットもあるのです。

税務調査で横領が発覚する

なぜ、税務調査で横領を暴くことができるのでしょうか。それは、税務調査が、「質問検査権」という法律に則った強い効力を持った調査だからです。

 

法律に則った調査が可能なため、調査場所に例外を設けず、企業内部の状況をくまなく調べることができるのです。また、無予告で現物調査(帳簿ではなく、メモやPCのデータなどを確認する調査)を行うことができるため、帳簿の改ざんなどによる、ごまかしを見抜くことができ、横領のわかりにくい手口を暴くことが可能です。

 

さらに税務当局は、事前調査として張り込みや尾行まで行うことができるため、徹底的に社内不正の犯行を調べることができます。

 

このため、税務調査から、社内監査では発見できなかった不正を明るみにし、横領や着服などの内部犯行を暴き出すことができるのです。

社内監査では横領を見破るのが難しい

しかし、企業では、社内監査を実施し、税務調査の前に横領などの不正を発見することができるはずです。なぜ、社内監査では不正を発見することが難しいことがあるのでしょうか。

 

これは、社内監査に、不正を暴くことを難しくする限界があるためです。

 

社内監査の限界のひとつは心情の問題です。社内監査は、監査といってもあくまで社内の社員が調べを行うため、不正の兆しを発見しても、「身内だから」と、ついつい目をつぶってしまいがちになってしまいます。

 

また、企業によっては、経営者や役員などが不正に関わっており、担当者レベルでは立ち入ることができない「聖域」が出来上がってしまっているケースもあります。

 

もうひとつは、能力的な問題です。社内監査を行う担当者は、あくまで財務・経理の専門家であり、監査の専門家ではないことが多いです。そのため、不正が複雑なプロセスで行われている場合、見破ることが難しくなってしまうのです。

横領見破りに絶大な効果のある税務調査

社内監査と税務調査は、一見すると、計算漏れの把握、架空計上・過大計上の防止、資産の棚卸しという全く同じ目的のために行われます。しかし、社内監査には、先程述べたような限界があるため、不正を暴く効果は高くありません。

 

対して税務調査は、法律に則って徹底した調査を行うことが可能なため、横領や着服などの社内不正を暴くのに絶大な効果を発揮するのです。