税務調査の時期

事業をはじめたことなどをきっかけに、税務調査が行われる時期について気になるようになる方は少なくありません。

 

予告なしに有無をいわさず行われるのかなど、あれこれ調べているうちに、ふといつ行われるものなのかと疑問に感じた方もいるでしょう。

 

今回は税務調査の実施時期に関する情報についてご紹介しますので、興味のある方はご一読ください。


税務署の事務年度

一般の会社の事業年度に該当するのが、税務署の事務年度です。

 

一般の会社であれば、国の会計年度にあわせて4月1日〜翌年3月31日に設定するケースがよくあります。
続いて多いのは、1月1日〜12月31日までに設定するケースでしょう。

 

これに対して、税務署の事務年度は独特なものがあるのです。7月1日〜翌年6月30日に設定されています。

 

一般の会社であっても、支社を展開しているようなところであれば転勤がある会社が多いでしょう。税務署においても同様に人事異動が行われているのです。

 

そのタイミングというのが6月末〜7月はじめ頃であり、大勢の人間が異動になります。

 

定期的に異動が行われる仕組みになっていますが、これには会社と癒着して悪事を働くのを防ぐ狙いもあるといえるでしょう。

 

税務署の事務年度が7月1日〜翌年6月30日に決まっているのは、この人事異動のタイミングにあわせてのことなのです。そして税務署の事務年度は、税務調査にも大きな影響をおよぼしています。

1〜3月

年明け後の3ヶ月間といえば、所得税の確定申告時期であることは、すでにご存知の方が多いでしょう。2月中旬〜3月中旬が申告期間ですが、電子申告や還付申告であれば、1月からでも済ませることが可能です。

 

申告期間後にも3月の末には消費税の申告期限を迎えますし、個人による期限後申告も多数行われています。また、個人では書類の作成方法を理解していない方が多く、申告期間中は税務署や確定申告会場で指導を受けて仕上げる方が大勢詰め掛けます。

 

これらすべてのことに、税務署側は対応しなければならず、1年の中では税務署全体が多忙を極める時期になっているのです。

 

個人課税担当の調査官も法人課税担当の調査官も確定申告の対応にまわることも珍しくなく、税務調査を行うのが難しくなります。

 

税務調査の際に証拠資料の整理や税務署側との交渉などの対応をする税理士も、同じように1〜3月は繁忙期です。
そのため、この時期には極力税務調査を実施しないようにと、税理士会から税務署に対してお達しが出ているという話もあります。

 

こうした理由があるために、1〜3月に税務調査が行われることは基本的にありません。ただ絶対にないというわけではないため、この点は頭に入れておいたほうがよいです。

 

税務調査はいつ行われるかわからないものなのですが、その中で1〜3月は確率的に最も低いという認識でいるとよいでしょう。

4〜6月

3月末の個人の確定申告時期が終了し、4〜6月は春の税務調査が始動する時期です。

 

まず4月は、税務調査件数には年間のノルマがあるため、クリアするための件数稼ぎが調査の主な狙いのひとつになっています。

 

次に5月は、会社の決算時期がピークを迎え、その処理に税務署全体が追われる形になります。

 

会社についている税理士も忙しく、調査に入るといわれても立会いが困難という理由で、税務署側とのスケジュール調整がつきにくくなるのです。会社側との日程の調整がうまくいかなければ、そのまま6月に突入してしまいます。

 

6月末〜7月のはじめ頃に人事異動が控えているのは、すでに述べたとおりです。

 

着手した税務調査が終了せずに異動命令が出ると、後任に引き継ぐ仕事が発生してしまいます。そのため異動命令を受けてもいいように、6月まで入り込んでしまわないような短期決着できる調査が中心です。

 

たとえば、大規模な税務調査ではなく、小規模な個人や会社が対象になるケースが多いでしょう。ただし、6月に税務調査がまったく行われないわけではありません。

 

異動時期に税務調査を開始し、後任が引き継ぐ形で実施されるケースもあるためです。

7〜9月

上半期と比較すると、下半期は税務調査が多く実施されています。というのも、上半期にある確定申告、決算、人事異動といった大きなイベントがないためです。

 

ただ、7月については10日に人事異動が行われるため、異動先での前任者による引継ぎや、調査計画などに追われることになります。そのため人事異動後しばらくは、税務調査に入るケースは少ないのです。

 

新体制になったことでのバタバタが落ち着く頃に、活発に税務調査が行われはじめます。早ければ7月下旬から、そうでなくとも8月末頃には徐々に税務調査がスタートするでしょう。

 

9月以降は年末まで上半期にあるような大きなイベントもなく、十分な期間を税務調査に費やせるため、大規模な調査も腰を据えて取り組めます。また新事務年度を迎え、税務署員には新たなノルマが割り当てられており、モチベーションが高まっていると考えることができます。

 

調査に入られる側としても、最も警戒すべき時期を迎えたといってよいでしょう。

 

税務調査は会社または税理士に対し、実施することを電話で事前通知してくることもありますが、してこないこともあるため要注意です。

 

この時期の前には調査に備え、証拠書類を整理したり、質問に対する回答をまとめたりなど、対策を強化しておくに越したことはないでしょう。

10〜12月

秋は税務調査の最盛期といわれており、7〜9月と同様にいつ来てもいいように万全の準備を整えておきたい時期です。ピークは11月頃までで、それには理由があります。

 

税務調査は会社への立ち入りは通常2日間ですが、調査後の資料提示、談判、税務署内での決済などを含めると完了までにひと月ほどは要します。

 

調査官としては、年内に決着したいと考えます。年をまたいでしまうと確定申告時期に突入してしまい、税務調査のための時間を確保しにくくなってしまうためです。

 

年内決着を実現するには遅くとも11月中に着手しなければいけなくなるリスクが高いため、11月頃までがピークとなっています。

 

また調査官が年内に片付けたいと考えるのは、年間のノルマも関係しているといわれています。

 

12月までに税務調査を完了していないと、大部分の職員がノルマを達成できないという話があり、これを嫌って年内の決着を望むわけです。

 

税務調査を受ける側としては、11月頃までに何もなければ年内については調査が入るリスクは極めて低いといえるでしょう。また、年明け後には何度も述べているように確定申告時期に入るため、再び下半期がやってくるまでは引き続き安心できるともいえます。

税務調査は全個人・法人が受ける?

人によっては大部分の個人、法人が税務調査を定期的に受けていると思っているでしょう。しかし、実際には違っており、2014年の調査によると個人では約1%、法人では約3%しか行われていません。

 

この数値から、ほとんどの個人法人が調査を受けていないことが理解できます。

 

不審な点のない個人、法人に対して税務調査を行っても、かけたコストを追徴課税で回収できないため、実施する意味がありません。また赤字続きや債務超過の状態のところを調査して問題が発覚しても、税金を滞納し倒産するリスクがあり調査が実施されることは少ないです。

 

そのほか、税務調査の対象期間は3年分が通常で、この期間に満たない会社も調査対象から外れやすいというのが一般的な考え方といえます。

税務調査の頻度

何年サイクルで税務調査が実施されるという決まりはありません。

 

事業規模や業種、業績などの要素が影響して実施するかどうかや、実施するサイクルは変わってくるのです。
不審・問題の多いところであれば毎年のように調査が入ることがありますし、そうでなければ20年以上音沙汰がないところもあります。

 

行われるとすれば、税務調査の対象期間は3年分が一般的なことを考えると、高頻度でも3年に1回程度ということになるでしょう。

 

なお初回で大きな指摘事項などあれば3年サイクル、大きな指摘事項などなければ5〜10年は調査が入らないことも多いようです。

 

税務署の事務年度中の活動に注目すると、秋に税務調査を実施しやすいことがわかります。また税務調査の対象となる期間は3年分になるのが一般的ということで、3年以上の歴史があるところは警戒を強めたほうがよいともいえます。

 

ただ何月何日、何年ごとに実施されるという決まりが税務調査には存在しないため、いつ調査が入ってもいいように備えはしておきましょう。