領収書に代わるものを提示できるかどうかがポイントになる

領収書がない場合、「領収書に代わるものを提示できるかどうか」が1つのポイントになってきます。税務調査では、「収入の申告に漏れがないか」や「売上が正しく計上されているか」といった点が重点的にチェックされます。税金の額を正確に計算するためには、経費の金額がわかる領収書などの書類が必要です。商売を営んでいる人は、帳簿をつけることや領収書を保管しておくことが必要とされています。したがって、領収書がそろっていないと税務調査で不利になることがあるのは確かです。ただ、税務署としては経費の金額が正確にわかれば良いので、証明書類は必ずしも領収書である必要はありません。

 

ほかの書類でもしっかりと経費を支払っていることが確認できれば、とくに問題にならないケースが多いです。領収書を万が一紛失してしまっても、「経費が認められないのでは」とむやみに不安になることはないでしょう。

支払証明書

領収書をなくしたときでも、取引先や利用したお店から支払証明書を発行してもらえば経費を払った事実は証明できます。こういった支払証明書には、支払った先の名前や住所、金額などが記載されていますので、税務署側でもすぐに確認がとれるわけです。例えば、支払った月ごとに領収書を受け取っていた場合、税務調査では1年分の領収書を1枚ずつ税務署にチェックしてもらうことになるでしょう。支払証明書の場合は、1枚の表に1年間の支払い状況が記載されていることが多いため、税務署としても経費の金額を把握しやすいです。

 

この手の支払証明書は携帯電話会社などでも発行しているので、領収書をなくしてしまったときには支払った先に相談してみましょう。

通帳

経費を口座振替などで支払っている場合には、通帳の記録も領収書の代わりになってくれます。通帳には支払先の名称や金額、日付などが記載されています。このような記録を見れば、領収書がなくても経費を支払っている事実を確認することが可能です。ただ、通帳は長く記帳をしていないと、取引記録が合算で記録されてしまうことがあります。実のところ、どの時点で合算になるかは金融機関によって異なります。半年以上記帳をしていなかったり、未記帳の取引が100件を超えたりしたときには、少し注意が必要になるでしょう。

 

合算で記録されてしまっても、金融機関に相談すればその間の記録を別に発行してもらうこともできます。ただ、こういったプロセスが必要になると少し時間がかかりますので、通帳の記帳はこまめにしておくに越したことはありません。

請求書

税務署の担当者によっては、領収書がなくても請求書があれば経費として認めてくれる場合があります。請求書だけでは実際にお金を支払った時期まではわかりませんが、記載されている金額分の経費がかかっていることは確認できます。請求書には、金額のほかにも日付やサービスの内容、商品名などが記載されているので、経費になるかどうかを担当者がチェックすることは可能です。領収書がないときには、請求書だけでもそろえておくのが経費をスムーズに認めてもらうための方法になるでしょう。

メモ

経費を証明する書類が何もない場合は、メモでも代用できることがあります。実のところ、電車やバスといった公共交通機関を利用したときの旅費などは、最初から事実を証明する書類がありません。このような旅費も、日付や金額などをメモしておくことで基本的には経費として認めてもらうことができます。もともとレシートや領収書がある場合、本来は書類が必要ですが、どうしても用意できないときには日付や金額、経費となった理由などを簡単にメモしておくだけでも、経費として認めてもらえるケースがあります。

クレジットカードの明細書は再発行してもらえる

クレジットカードで経費を支払っていた場合は、カード会社から発行される利用明細書が経費を証明する書類に該当します。ただ、このような書類も、紛失してしまったりうっかり捨ててしまったりすることがあるかもしれません。通帳でも取引記録の確認が難しいときには、カード会社からもう一度利用明細書を発行してもらうこともできます。また、数カ月以内の履歴であれば、WEBの明細などで確認できる場合もあります。明細をプリントアウトすれば、経費の証明書類として使用できるでしょう。

領収書がないと消費税は経費を認めてもらうのが難しい

所得税の場合は、比較的少額の経費であれば領収書がなくても認めてもらえるケースがあります。しかしながら、消費税については領収書がないと少額の経費でも認めてもらえないことが多いので注意をしましょう。売上が多い場合は、消費税の金額も上がります。経費が認めてもらえるかどうかはその年の税金に大きな影響を与えるので、白色申告をする場合でも領収書はできるだけ用意しておきたいところです。どうしても領収書が見つからないときには、税務署の担当者に帳簿を見せて十分に説明することが大切。交渉をすれば、ある程度の金額までは経費を認めてもらえることがあるかもしれません。

領収書があっても経費として認められないケースがある

お店が発行した領収書でも、内容によっては経費の証明書類として使えないこともあります。例えば、宛名の部分に「上様」と記載されている場合は要注意。このような書き方だと、実際に経営者やその会社が支払ったお金かどうかが確認できません。宛名の部分だけインクの色が違う、といった後日に加筆した形跡があるときも、税務署から指摘されることがあるかもしれません。また、日付が書いていない領収書は基本的に無効です。万が一、お店の人が日付を書き忘れているときは、早めに申し出て記入をしてもらいましょう。

 

印紙については、税務調査の時点で貼り付けしていなくても経費が認められないことはありません。ただ、印紙が必要な金額の場合は、気付いた時点で貼っておくのがベストです。領収書が手元にあるとつい安心してしまいがちですが、内容に不備があると、ほかの書類であらためて経費を証明しなければならなくなります。税務調査の直前に慌ただしく書類をかき集めたり、金融機関に問い合わせたりするのは避けたいところです。

概算で申告してしまったときは修正申告をしよう

税金の申告には一定の期限があるため、領収書がなくても概算で経費を計算して申告を済ませてしまっているケースもあるかもしれません。このような状態のときには、できるだけ早く正確な経費を計算して修正申告をするのがよい方法です。前回に申告した内容と実際の経費の金額が違っていると、税金の額も変わってきます。この場合、かなり金額が違っていたとしても、早めに自分で修正申告をすれば悪質なケースとして扱われる可能性は低くなります。納付期限を過ぎているときには一定の利率で延滞金が発生しますが、利率が高い重加算税や無申告加算税などが加算される心配は少なくなるでしょう。

 

税務調査などでたまたま経費の金額が違っていたことが露見してしまうと、場合によってはこの手の加算税が発生してしまいます。これまで概算で経費を計上していたときには、税務調査が入る前に計算をし直して修正申告をしておきましょう。

税理士は税務調査のサポートも行っている

領収書の管理や帳簿の記録などに自信がないときは、税務調査に強い税理士に相談するのも1つの方法になるでしょう。実際、税務調査が入ると知り、慌てて税理士に相談をする経営者や企業も少なくありません。このような相談をすると、税理士は調査の際にそろえておくべき書類などを教えてくれます。税理士は税務調査でチェックされるポイントを把握しているため、問題にならないような方法をアドバイスしてくれることが多いのです。また、領収書がない場合、できるだけ税金の額を減らせるように税理士が税務署と交渉してくれるケースもあります。