税務署が必要と判断したときにはデータの復元が行われることがある

パソコンなどにデータが残っていない場合、税務署が復元まで行うかどうかはケースバイケースです。例えば、会社のお金を会計ソフトなどを利用して管理していたときには、データがないと税務調査そのものが難しくなります。パソコンのデータのほかに何も資料がない場合は、その年の税金の計算ができないため、税務署がデータを復元する可能性もでてくるわけです。ただ、専門機関に依頼してデータを復元するとなると、一定の費用がかかります。

 

税務署としても、余計なコストはできるだけかけたくないのが本音です。したがって、復元まで行うケースはどうしても必要なときに限られてきます。ほかの方法で調査ができるようであれば、税務署もあえてデータの復元までは行わない場合があります。

専門機関ではあらゆるデータの復元を行っている

実のところ、税務署が本気で調査を行った場合、あらゆるデータを復元できる可能性があります。

 

パソコンやサーバーなどに保存されているデータは、デジタルデータフォレンジック調査を行うことでかなり正確に復元できるようになっています。この手の調査を請け負うサービスは、全国的に増えている状況です。国税庁や警察などの公的機関から信頼を得ているサービスも見られ、この手の調査は税務調査や捜査の際に広く利用されています。専門機関の技術をもってすれば、削除したメールやファイルの復元などは比較的簡単にできる場合が多いです。

 

会計ソフトそのものをパソコンから削除してしまっていても、専門のサービスに税務署が依頼をすれば復元されるケースがあります。専門のサービスでは、不正な計算プログラムの解析なども可能なので、発見が難しい悪質な隠蔽や脱税の証拠もときに見つかることがあるのです。

税務調査には強制と任意がある

税金に関する調査は、強制と任意にわかれています。

 

強制調査は、いわゆる査察と呼ばれる調査です。この調査では、裁判所が発行した令状を持って国税庁の担当者が会社や経営者の自宅などを訪れます。査察の場合は、事前連絡などはとくにありません。

 

日時を指定して行われるのは、基本的に任意の税務調査です。任意の調査の場合も、対象者は調査に協力をすることが必要になっています。ただ、事業に関係がない質問などには、むやみに答えなくてもよい場合があります。税務調査は、あくまでも事業に関する事柄について行う調査であり、プライベートな内容については質問を拒否することも可能です。

税務調査でのデータの開示方法

自分でデータを開く

税務調査の際に担当者にデータを見せるときには、自分でパソコンを操作するのがコツになってきます。担当者が見たいデータを聞き、自身でファイルやソフトを開いて情報を開示しましょう。このような場合、パソコンの操作を税務署の担当者に一任してしまうのはできるだけ避けたいところ。パソコンに保存しているデータが多いときなどは、担当者から余計な質問をされる可能性もあります。疑いを招くリスクを減らすためにも、データを見せるときには自分で操作をして該当するページや記録を画面に表示しましょう。税務調査で不快な思いをしないためには、このようなちょっとした工夫が役立ちます。

該当するページをプリントアウトする

何ページにもわたるデータの場合は、該当する部分をプリントアウトしてから担当者に見てもらったほうがよいでしょう。このような方法をとれば、担当者に関係がないファイルなどを見られる心配がなくなります。そもそも、データをプリントアウトしておけば、資料として担当者がそのまま持ち帰れるため、調査がスムーズになることが多いです。担当者と一緒にパソコンの前で長時間過ごす必要もなくなりますので、落ち着いて対応ができるようになるでしょう。実のところ、税務調査のときにはナーバスになる人が多いですが、こういった工夫で緊張感もだいぶ和らぐ可能性があります。

 

 

 

調査の範囲を超えているときは理由を尋ねよう

税務調査で担当者から提示を求められても、事業に関係がない場合は拒否もできます。

 

例えば、プライベートな用件のメールや事業に無関係のファイルなどは、税務調査の際に担当者に見せる必要はありません。また、個人の預金通帳なども事業の取引で使っていなければ、提示をしなくてもとくに問題はないでしょう。

 

万が一、本来の調査の範囲を超えた要求をされたときには、理由を尋ねるのが1つの方法です。担当者が単なる好奇心で質問していることもあり得ますので、本当に調査と関係があるのかどうかを確認してみましょう。これといって調査と関連がないようであれば、事業に関係がないことを理由にして提示を拒否することも可能です。

 

少し面倒なのは、事業とプライベートの両方に使っていたファイルや預金通帳などがある場合です。こういったときは、提示を完全に拒否するのは避けたほうがよいでしょう。プライベートな情報を見られたくないときには、事業に関係がある情報だけをピックアップして提示する方法などがあります。

むやみにデータを削除するのは疑いを招くもと

税務調査があると知り、パソコンのデータを急いで削除したくなる人もいるでしょう。ただ、この時点で一気にデータの整理に取り掛かるのは、あらぬ疑いを招くもとになるので要注意。ファイルの数が極端に少なかったり、ごみ箱などに削除したファイルが大量にあったりすると、税務調査の際に担当者に不信感を与えてしまうことも考えられます。「ほかにも削除したファイルがあるのではないか」と疑われてしまいかねないので、調査の前に慌ててパソコンのファイルを一掃するのは避けたほうがよいかもしれません。

 

疑いを招きそうなファイルやフォルダーがあるときは、税務調査の前に名前を変えておくのもよい方法になるでしょう。プライベートな内容のファイルなどは、事業に関係がないことがはっきりとわかるような名前で保存しておくのがコツです。

データがない場合は反面調査が行われるケースもある

目的のデータがすでにない場合、税務署は復元という方法とは異なるアプローチで情報を得ようとする可能性もあります。例えば、任意の税務調査でもよく行われるのが、取引先などに問い合わせて事実を確認する反面調査です。反面調査が実施されるときには、税務署からその旨が伝えられます。取引先に記録が残っていれば売上額などが確認できるため、データがないときにはこのような方法で税務署が対応するケースも多いのです。このような反面調査は、ある程度データがそろっている場合でも実施されることがあります。

 

不正の疑いがあるときはもちろんですが、事実が曖昧なときや、申告の内容に間違いがないかどうかを確認したいときにも反面調査は行われています。

税務調査をいたずらに恐れることはない

税務署から税務調査に協力して欲しいと言われても、不正な行為を行っていなければとくに恐れる必要はありません。万が一、申告をした内容と事実が違っていたとしても、故意に不正行為を行ったのでなければ高額な追徴金が発生することは少ないでしょう。申告した内容に誤りがある場合、修正申告をするように税務署から要請がある、もしくは、更生の手続きをへて申告書の内容が変更されます。申告した内容でとくに問題がなければ是認通知書などの書類が発行され、税務調査は終了です。調査のプロセスをひととおり知っていると、いたずらに不安を抱えることは少なくなります。

 

任意の税務調査は、ビジネスライクな雰囲気のなかで行われるのが一般的であるため、リラックスして対応するのがベストです。調査の際に税理士に立ち会ってもらうことも可能なので、不安な人は信頼できる事務所を探しておくとよいでしょう。税務調査の前に行っておきたい準備なども、税理士から聞ける場合があります。