税務調査とは

会社などが所得税や法人税の申告を行った際に、その内容が正しいかどうかを調査することを税務調査と呼びます。税務調査は、地域ごとに設置された税務署か国税局が行うのです。税務調査の種類は、2種類あります。そのひとつが裁判所の命令のもと強制的に調査を執行する「強制調査」です。また会社で雇っている税理士などの立ち会いのもと、調査官が調査することを「任意調査」と呼びます。

 

強制調査は特別なもので、滅多に行われませんが、任意調査は珍しくありません。税務調査は、すべての会社が毎年必ず受けるものではなく、ある基準に則って調査が必要だと判断された場合に行われます。

 

設立してから十年近く税務調査が入らない会社もあれば、数年に一度は必ず税務調査が入る会社もあるのです。税務調査が行われる基準は、どこにあるのでしょうか。税務署や国税局は、実際に税務調査に入る前に、事前調査を行います。事前調査では、申告書自体や申告状況、会社の経営指標や税歴などを調査するのです。例えば申告状況の調査とは、「期限内に提出しているか」「きちんと納税しているか」などを調査します。特別に難しいことを調べているのではなく、ごく当たり前のことが、キチンとされているかどうかをチェックするのです。これらのポイントを調査した上で、更に詳しく調べる必要があると判断されるた場合、実際に税務調査が入ることになります。

税務調査の管轄が決まる基準

会社は、基本的に税務署の管轄下にあります。税務署は全国に複数ありますが、会社の本店がある所在地によって、管轄する税務署も決まるのです。そのため税務調査の途中で会社の本店が移転となった場合、管轄する税務署が変更になることがあります。

 

また会社側としては、本店移転に伴い所轄が変わると、法人税申告書の提出先などが変更されます。例えば事業年度中に本店移転した場合は、移転後の担当所轄に提出しなければなりません。事業年度が終了した後でも提出期限内であれば、同様に移転後の所轄税務署へ提出します。ただし、事業年度終了後、提出期限を過ぎてしまった場合は、移転前の所轄税務署へ提出しなければならないのです。

 

会社の所在地によって管轄する税務署が決まるため、本店移転の際には、速やかに異動届出書を提出しなければなりません。異動届出書には、社名や事業年度、代表者などを記入して、登記が済んだ後に税務署に提出してください。この異動届出書の提出先は、移転前と移転後の両方の税務署になります。この処理を怠ると、移転前の税務署では無申告扱いとなり、移転後の税務署では存在しない会社として扱われる可能性があるので、注意が必要です。

 

税務調査の管轄は、会社の規模によっても異なります。大きな利益をあげている大企業の場合、税務署の特管部門が担当することがあるのです。特管部門は、大手企業を対象として税務調査を行う機関であり、多くの場合は、複数人で重点的に調査へあたります。これは調査する範囲が広くなったためにスタッフを増員したということであり、特別に厳しく調査されるということではありません。

 

また会社の資本金によっては、税務署ではなく国税局が税務調査を行うことがあります。国税局とは、税務署を管理監督する立場の機関です。主に法人などを対象にして、大規模な滞納者や脱税者を日頃から相手にしています。

 

国税局が税務調査をすることで、企業側にデメリットは生じるのでしょうか。一概には言えませんが、たとえば「調査期間が長くなる」ことが懸念されます。ではどのようなタイミングで税務署から国税局に変わるのかというと、資本金を増資したタイミングが一般的です。企業の資本金が1億円を超えると、国税局が担当になるといわれています。そのため、増資するタイミングは慎重に考察しなければなりません。

広域調査がされる基準

税務調査の中には、広域調査というものがあります。広域調査は、例えば本店の他に支店をいくつも運営しているような、大規模な企業に対して行われる調査です。文字通り広域の対象に対して、一斉に調査が行われます。基本的に広域調査は、予告されずに抜き打ち調査されることが一般的です。事前に調査する旨を伝えてしまうと、「本店と支店の間で口裏を合わせる」機会を与えてしまうことにもなりかねません。

 

企業にとって広域調査が入るということは、できれば避けたい事態です。複数の支店で同時に調査が入るので、その対応だけでも大変な労力がかかるからです。これは、特にやましい経営実態がなくとも、デメリットだと言えます。

税務調査のスケジュール

会社に税務調査が入る場合、そのスケジュールはどのようになるのでしょうか。税務調査の期間は、会社の規模が小さいほど短期間で行われます。例えば従業員数が20名以下の中小企業の場合、およそ3日程度で終了するのが一般的です。

 

初日には帳簿を調べたり、会社の経営状況のアウトラインを調査したりします。事業内容を確認したり、仕入先を確認したり、従業員の雇用状況を確認したりするのです。調査内容によっては、経営者の家族構成まで確認されることもあります。このような基本的な情報は、事前資料として税務署に提出しているものですが、実際に会話をすることで、内容の再確認を行っているといわれています。質疑応答の後、帳簿などの資料に目を通すことになるでしょう。

 

税務調査の二日目には、細かな部分まで調べるために、帳簿などが詳しく調査されます。会社のスペースを利用して調査をするのが一般的ですが、希望すれば税務署に持ち帰って作業してくれることもあるのです。スペースを占有されることで、業務に差し支えが生まれる場合には、そのような対処を申し出るとよいでしょう。ちなみに税務調査にきた担当者が社内で調査をおこなう場合、昼食などを用意する必要はありません。

 

そして最終日となる三日目には、税務署の担当者などから問題点の指摘と改善案が提案されます。これが一般的な税務調査のスケジュールです。

赤字でも税務調査は行われる

会社の経営状態が赤字の場合でも、税務調査は行われます。赤字経営であれば、法人税など一部の税金の納税義務はありませんが、税務調査は免除されないのです。会社経営をすると、固定資産税や事業所税など、法人税以外にも納税義務が発生することがあります。これらの税金は、たとえ赤字経営でも支払わなければならないのです。

 

税務署などでは、税金全般に対して正しく処理が行われているかを調べるために、税務調査を行なっています。そのため会社の経営状態に関係なく、税務調査は行われるのです。また会社のなかには、経営状態を偽装して、あえて赤字と見せかけるケースもあります。これは納税の義務から逃れるためのものであり、税務調査により発覚することもあるのです。

税務調査で調べられる期間

税務調査がされると、何年前までが調査対象となるのでしょうか。例えば創業50年の老舗企業が調査を受ける場合、50年分をすべて調査されることは、ほとんどありません。一般的には、過去3年分を調査する程度ですみます。しかし不正などが発覚した場合は、5年前、7年前と遡って調べることがあるのです。

 

税務署には、過去に遡って税金を徴収できる権利があります。その遡れる期間が、7年間なのです。そのため数年間、税務調査が入らない状態が続いたとしても、ある日突然に税務調査が入ることもあります。その場合、過去に遡って税金を徴収される可能性もあるのです。

 

「会社に税務調査が入ったことがない」という話を聞くことがありますが、それはたまたま数年間、税務調査を受けていないというだけのことです。すべての会社が税務調査の対象となっていることは、確かなことだと言えます。