企業が自社の資本金を増やす行為が「増資」です。

 

増資には銀行からの借り入れや社債発行などを行わずに資金を調達できるというメリットがあります。

 

増資で調達した資金であれば返済利息の負担が発生せず会社経営に及ぼす影響も少ないので長期的な安定経営に向いている資金調達法です。増資のやり方については法律により手続きが定められています。今回は、増資の方法や注意点などを紹介します。

有償増資と無償増資

企業が増資する方法は有償増資と無償増資の2種類に分けられます。

 

有償増資は株主による一定金額の負担をともなう増資方法で募集する範囲後がにより公募増資、株主割当発行増資、第三者割当増資などがあります。

 

無償増資は株主による追加負担を伴わない増資で、主に株式分割という形で実行されます。

公募増資とは

公募増資とは、企業が新株を発行し投資家向けに販売することで資金を調達する増資方法です。

 

広く資金を集められ投資家も少ない負担で株式を取得できるというメリットがありますが、発行済株式の価値が相対的に下落するため価格が下がり利回りが悪化するというデメリットがあります。

株主割当発行増資とは

既存株主が所有する株式の割合に応じて平等に株式を割り当てて実施されるのが株主割当発行増資です。この方法では新たに発行された株式の売却金額が増資金になります。割り当てを受ける既存株主の持株数は増えますが持ち株比率は変わらないので経営権などに影響をあたえることはありません。

 

株主Aが100株、株主Bが50株所有している会社で株主割当発行増資が行われるケースではAとBは持株比率と等しい2:1の比率で新たな株式の割当を受けます。例えばAが100株の増資を行うのであればBは50株の増資、Aが20株の増資を行う場合はBは10株の増資と増資金額にかかわらず常に割り当て負担は既存株式の持株比率と等しくなります。

第三者割当増資とは

第三者割当増資では既存株主の持株比率とは無関係に増資が割り当てられます。広く資金が集められるメリットがありますが既存株主以外にも増資を割り当てられるので持株比率が変わる可能性があり経営権を失うなどのリスクも伴います。

 

株主Aが100株、株主Bが50株所有している会社で第三者であるCが151株の増資を割り当てられるとCは株式の過半数を所有することになり実質的な経営権はCに移行します。

増資に必要な費用

増資手続きに必要な費用は登録免許税3万円もしくは増資金額の1000分の7と決められています。これは手続きに必要な金額のみで、実際に増資する際は各種手続きや公示アナウンスなどの経費が発生します。行政書士に増資手続きを依頼すれば依頼料も必要になります。

増資手続きに必要な書類

・株主総会の議事録
・取締役決議書(取締役会が設置された場合は取締役会の会議事録)
・株主全員分の株式申込書
・資本金の額の計上に関する証明書
・変更登記申請書
・払込証明書(株式引受人の氏名と払込金額、法人名義通帳の表裏各表紙、口座番号と支店名)

 

必要書類が揃わないと増資できません。株式申込書は割り当てを受ける株主全員分が必要なので注意してください。

発行可能株式総数に注意

発行可能株式総数を超える株式を発行して増資を実行することはできません。増資前に必ず定款で定めている発行可能株式総数を確認して下さい。もし発行予定の新株数が発行可能株式総数を超えるようであれば事前に定款の改定手続きが必要になります。

 

ただし、公開会社では発行可能株式の総数は発行済株式総数の4倍までと上限が定められています。4倍を超えてしまう場合はまず発行済株式総数を増資で増やしてから発行可能株式総数を変更する手続きが必要になります。